寒い季節にお笑いがあってよかった

2022/10/01

血尿と熱が出た。

初めての事だったのでこれは一大事だと出張中の旦那に連絡し、そのあと医療相談ダイヤルに電話をかけたが、経過観察するよう言われた。身体の怠さが以前入院することになった時と似ていて「このタイミングで入院か」と不安になった。

バファリンと水を飲んで横たわった。吐瀉物が喉に詰まってしまうので、身体を少し横にずらしたような体制になる。

安静にしながら、目が覚めたら数年前に戻っていたらどうしよう、と不安がまた始まった。分岐条件やその後の処理を考えようとしてすぐさま「いやそれにしてもこの世界線で幸せになれたな」と不思議な満足感があった。幸福感で不安ループが終わった。

 

2022/10/02

体調不良が続き、出張を控えた旦那をなじりそうになった。しかし大人になった私は違う。旦那の脇腹をつまみ、20秒ほどぷにぷにして、気持ちを落ち着けた。

 

2022/10/04

引き続き熱が出ている。早めに仕事を切り上げ、安静にする。

寝付けないのでNetflixでペルーに住む鯨のドキュメンタリーを観た。そこでは「シロナガスクジラの若い雄は歌を歌う」と解説されていた。歌う鯨は海面近くで少し身体を拗らせて音を出していた。

その音には確かにリズムがあるようだった。

音のパターンがあるようでないような、気まぐれな鼻歌のような感じ。好きな曲の一箇所だけとか、なんか自分が心地よい時に出す音の連鎖。

遠い世界でご機嫌でいる鯨を観て、なんだか元気が出た。

 

2022/10/05

なんだか調子が良くて結構仕事をこなした。仕事終わりに念のため検温したら38度後半で、単に熱に慣れているだけだった。あまり自分の感覚を信じたらいけない。

 

2022/10/06

横浜は結構な雨が降っていた。夕方には風も強く、地面に打ち付ける雨が波打っているのが見えるほどだった。少し険しい気持ちになりながら坂を降りていると家族づれとすれ違った。どうやら保育園から家に向かう途中らしい。

黒い傘の男性と、赤い傘の女の子がすごく楽しそうだった。男性が後ろを振り返っていて、その目線の先を見ると黄色いレインコートの子が険しい顔をしながらてくてくと歩いていた。

他にも数組とすれ違った。どの大人もなんだかすごく嬉しそうな顔をしていて、こんな表情がこの世にあったのかと新鮮な気持ちになった。

 

2022/10/08

Netflixで「39歳」を1話観た。この年代が主人公の作品を初めてかもしれない。

この世代の話を聞く機会があまりなく「みんなどうやって生きているんだ?」と思う。

もうこれくらいの年代になると置かれている環境がバラバラで人の話が参考にならない、というのはあると思う。自分の基準でその時々の決断と手続きをしていくしかなさそうだ。

ドラマの中では自分の内側に溜まってしまった感情や、色々な制約を抱えながらも平然としている大人達が描かれていた。平然、というのはキーワードかもしれない。大人は些細な事でいちいち騒がず、問題があれば対処する。

 

「38歳」では孤児院から養子になり、美容皮膚科の医師として成功している人物が出てくる。それに対して「家族のお陰でマトモに育った」という友人の言葉が刺さった。

それほど家族というのは「マトモに育つ」のに重要なのだと思い、実際そうなんだろうと思う。何を持って「マトモ」とするか、というのは難しいのだけど、

 

・健康であろうとする事、そのための習慣を持つ事

・うがった考えをしない事

・一貫した志向に基づいて判断している事

 

あたりがマトモさ指数のパラメータになると思う。

学ぶとか、技術を身につけるとかは別に本読むなり何なりすればいい。それ以前の「自分は大切な存在なのだ」という信念を養うことこそが「マトモに育つ」という意味なんじゃないか。そして後天的に信念を書き換えるのは本当に難しく、「育てる」段階で家族が子に与える影響はとてつもないものだ、といつも通りの結論に至る。

そして自身としては子を育てて自分も育つ、みたいな着地点を想像するのだが

しかし、この「38歳」は子供を育てる話は一切出てこない。

 

2022/10/09

キングオブコントを観た。

コントは「異質な存在」と「普通の存在」の掛け合わせで成り立っている事が多く、私はなんとなく「異質な存在」側に思いを馳せてしまう傾向にあった。どうしてこうなってしまったのか、誰も助けてやることはできなかったのか、などなど。

う団の1stステージのコントは普通の人間の異常性を描いていて、しかも根こそぎ肯定するような勢いがあった。「人間ってこういう所ありますよね」という人間賛歌のように感じられ、なんだか救われるような気持ちになった。寒い季節にお笑いがあってよかった。