魔法使いに向いてる

「終わらない日常」 を超える処方箋

破れた夢の味

 

憧れの先輩と、京都の四条できらきらしたフルーツポンチを食べてきた。

先輩はもう働いていて、久しぶりに会ったら顔が少しだけ引き締まっていた。

 顔にすこし疲れの影があったけれど、私も私で見ないフリした。

「最近元気だった?」と聞かれて

もういいや、と思って「とても元気じゃないですよ」と返してしまった。

 

僕の夢は破れて、其処に血を流した。

あとにはキラキラ、星が光っゐた。

中原中也「僕の夢は破れて、其処に血を流した」中原中也全詩集 (角川ソフィア文庫))

 

「元気じゃない」の中身として、精神的に参っているということ、

肺炎とかにかかって身体も困った状態になっていることとかを話した。

 

なんだか近代文学の作家は肺炎であっけなく亡くなっていて、少しだけ羨ましく思う。

私も身体があんまり強くないけど、優秀な医薬学者のお陰で肺炎になっても死にませんでした。でも逆に、中途半端に覚醒した生命科学を恨んではいる。

 

 

 

先輩にはしんどいって言ってしまった。

 

私は自分だけがしんどいとは思わない。

みんな苦労してるし大変なんだと思う。

ただ言わないだけだ。

 

だけど私は言ってしまった。

言った瞬間、先輩のにこやかな顔の奥に困ったような曖昧な表情が見えた。

 

…いつも先輩は私が困った時に助けてくれるれる。いつもにこにこしているし、気配りができるし、何より強気だ。


だけど”良い所”しか私には見せてくれなくて、一緒に苦労を乗り越えていこう、みたいな事はないんだなぁ、となんとなく思った。


綺麗なことは切り取って、きっと覚えていてくれるひとだ。


だけど私の腐ったようなしんどいところは、たぶん忘れられる。そしてそれが、先輩の強さだと思う。


それでも、なんだかちょっと寂しい。

 

…あとは最近買ったヘッドホンの話とか他愛のない話をして、それぞれ帰路についた。


また会いたいと思うけれど、

会いたくない気持ちも強い。

人と会った後はいつもこう思う。



最近読んだ本で、次の1節がすごく刺さった。



この社会の在り様に対して〈異化〉意識の持ち主として自らを位置付けたとしても、時間が経てば誰もが元の木阿弥であらかじめ決められていたであろう各自の「持ち場」に帰っていき、社会の一構成部分としておさまっていく。

村上春樹 「喪失」の物語から「転換」の物語へ pp24

 

いわゆる「社会活動」というか

社会に異を唱えるようなことはやっていないけれど、生活の中で感じる違和感や驚きは言葉にしようと試みてきた。


だけど最近、椅子取りゲームの音楽が止まっていることに、ようやく気付いたような気がする。


空いてる椅子を探さないとな。