魔法使いに向いてる

「終わらない日常」 を超える処方箋

【ネタバレ】「から紅の恋歌(ラブレター)」の和歌のまとめ+解説

こんばんは~

ついにコナン映画「から紅の恋歌(ラブレター)」を観てきました。

f:id:lyrisist-lily:20170424051743p:plain

ので作中に登場した和歌と、それに関連して若干の解説をしようと思います。

 

 

 

「紅葉」に関する和歌

トリックそのものとはあまり関係がなく、単に犯行予告として使われた和歌たち。参考までにまとめておきます。

各位、自由研究にお使いください。

05 奥山に もみぢ踏み分け 鳴く鹿の 声聞く時ぞ秋は悲しき        猿丸太夫
17 ちはやぶる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは    在原業平朝臣
24 このたびは 幣もとりあへず 手向山 紅葉の錦 神のまにまに       菅家
26 小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば 今ひとたびの みゆき待たなむ     貞信公
32 山川に 風のかけたる しがらみは 流れもあへぬ 紅葉なりけり    春道列樹
69 あらし吹く み室の山の もみぢ葉は 龍田の川の 錦なりけり     能因法師

 (出典:カラー小倉百人一首二訂版)

カラー 小倉百人一首 二訂版

カラー 小倉百人一首 二訂版

 

次に、蘭・和葉・新一の選歌を紹介します。

蘭が選んだ歌

めぐり逢ひて 見しやそれとも わかぬ間に 雲隠れにし 夜半の月かな(紫式部
(拙訳)めぐり逢ってあなたの姿を見ることができたのかどうか、よくわからない間に、あなたは姿を消してしまった。まるで雲に隠れてしまった真夜中の月のようだなぁ

得意札を決めようとする和葉に対し、「自分ならこれ」といって選んだ歌。

いつもすれ違う蘭と新一の関係を歌っているようで、なかなかいい選歌なのではないでしょうか。

 和葉ちゃんの選んだ歌

しのぶれど 色に出でにけり わが恋は 物や思ふと 人の問ふまで (平兼盛

(拙訳)内緒にしているのに態度に出てしまうようだ、私の恋は。「物思いか」と人に問われるほどまでに

 

これは…解説不要でとても良い選歌ですね。ドギマギしてる和葉ちゃんかわいい。

 

あと作中には(たしか)登場していませんでしたが平兼盛の「しのぶれど~」という歌とペアで評される歌があります。

恋すてふ わが名はまだき 立ちにけり 人知れずこそ 思い初めしか (壬生忠見

(拙訳)恋をしているという私の噂がもう立ってしまった。人知れずに思い初めていたはずなのに。

 

この二首は同じ歌合せ*1で票を分けた歌です。どちらも忍ぶ恋の歌で、優劣がつけにくいほど素直で洗練されていると思います。

当時の評者も互角の出来に選歌ができず、村上天皇の意向を伺うことになりました。意向を聞くと、御簾の中から「しのぶれど~」を口ずさむ天皇の声が聞き取られ、勝敗が決定したそうです。

そしてこの評を聞いて「恋すてふ~」の作者、壬生忠見はショックで摂食障害になり、そのまま死んでしまいました……

この話を聞くと、本当に「なんで歌人すぐ死んでしまうん?」と言いたくなりますね。いや本当に。

瀬を早み 岩にせかるる 滝川の われても末に 逢はむとぞ思ふ(崇徳上皇
(拙訳:水の流れが速いので、岩で分かれてしまう滝の水。分かれても最後には水が川で合わさるように、私もあなたにまた逢いたいと思う)

新一が蘭の選歌に対して送った歌。何度別れてしまっても、必ず会いに行く。そういう決意の歌としても読めますね。

いやはや、美しい情景を歌ったよい恋歌ですぞ。

崇徳天皇の歌、ほかにもすごく良いのがあるんで紹介させてください。

 

・朝夕に花待つころは思ひ寝の夢のうちにぞ咲きはじめける

(拙訳:朝も夕方も、桜が咲くのを待つ頃には桜を思って寝て見た夢で桜が咲いてしまう)

・山たかみ岩根の桜散る時は天の羽衣なづるとぞ見る

(拙訳:山の高いところ、大岩のほとりに生える桜。その桜が散る時は天の羽衣が岩を撫でているように見える)

 

この歌の透き通るような文体と、美しい見立て…!この文字数だけでこれだけの情景を描き切るの、到底できませんよ…

 

崇徳院(崇徳天皇 崇徳上皇) 千人万首

 

感想

エントリー終盤ではただの崇徳院推しの人になってしまいました。

なんだか「から紅の恋歌」、アクションシーンを盛り込みすぎて観ていてしんどかったです。テレビ局から脱出するコナン君、でかいアンテナをスケボーで滑走して加速していましたが、もうあれってソニックじゃないですか?

f:id:lyrisist-lily:20170424051521p:plain

ただ映画鑑賞直後のこのツイートのように、短歌や和歌の界隈で今回の「から紅の恋歌」のような出来事は割とありそうな話で、なんというか観ていてしんどかったです。

先に挙げたように歌会で負けて死んでしまった歌人はいますし、「から紅の恋歌」の第一の犯人である皐月さんみたいな人がいてもおかしくないなぁ、と。

派閥継承の話もリアルだと思いました。

ただ、「言葉ひとつで人を生かすことも殺すこともできる」とは言いますが、人の言葉で意志を曲げてるようじゃ駄目だと思う昨今です。

もっとも、意志を曲げないことが正しいのかどうか、誰も知らないのですが。

自分の信じる道を歩むしかないですね。

 

短歌の修辞技法のひとつ、歌枕について解説した記事はこちら。

これを書いた時は、作中にどんなレトリックが使われるのかドキドキしていました。

結局トリックとレトリックは全く関係なかったのですが…

いちおうエンディングに倉木麻衣の歌に「渡月橋」が何度も出てたから歌枕として認定してもいいかな。

lyrisist-lily.hatenablog.com

また、和歌に興味を持った方はぜひ万葉集などに手を出してみてください。

美しさに触れる、ということだけで人生の質は高まるように思います。

 

NHK「100分de名著」ブックス 万葉集
 

そして現代短歌から、歌集を紹介しているのはこちらの記事です。

古語の勉強からやるのはつらい…という方は現代短歌から入るといいと思います。

lyrisist-lily.hatenablog.com

 

それでは、ごきげんよう

f:id:lyrisist-lily:20170323233227j:plain

 

 

 

 

 

 

*1:かるた大会ではなく、和歌を提出してその優劣を競うもの