魔法使いに向いてる

「終わらない日常」 を超える処方箋

PPAPが面白い理由を言語学的に説明するよ(´・ω・`)

3月14~17日の間、言語処理学会に行ってきました。

なによりも同世代の発表を見てすごくいい刺激を受けたし、来年は絶対に発表する側になりたい!

あ、ちなみに「『学会に行く』ってどんな感じなの?」ってこの前聞かれたんですが、個人的にはコミケとか文学フリマに行く感じに近いですね。どっちも行ったことないけど。

たぶん通販で後から買えるけど、やっぱり会って直接著者と話したいし、色んなブースを見れた方が効率がいい。そして何より祭りっぽい感じが好き。

 

さて、その言語処理学会の講演でとある言語現象が話題になりました。*1

 

ピコ太郎,正体,古坂大魔王,ppap

 

そう、その言語現象とはPPAPのこと。今年に入ってからも武道館ライブを開催するなど、衰えるところを知らない一発ネタです。

 

しかしながら、どうしてこんなネタが面白がられるんだろう?と疑問に思われる人も多いんじゃないでしょうか。かくいう私もそうでした。

だけど、色々分析するとなぜ面白いかがはっきりしたので、このエントリーではPPAPが面白い理由を言語学的に説明したいと思います。

 

 

先行研究

 

ちなみに、当エントリーよりも早い時期にPPAPを考察したのは次のエントリー。

sasakiarara.hatenadiary.com

このエントリーを読んでまずびっくりしたのが、作者が歌人佐々木あららさんだったこと!佐々木あららさんは短歌の自動作成システムを作ったりしていて、以前から面白い方だな~と思っていた。

だけど…短歌ファンかつ言語学の私にとって、佐々木さんのこのエントリーは満足できなかった。

佐々木さんの考察の問題点は以下の2点。

①リズムの話を全くしていない

佐々木さんのエントリーではPPAPが音声学的視点で語られているけど…ここで触れられているのは「PPAPってなんか口ずさみたくなる感じするよね?」っていう話で、すなわち韻の話。

PPAPはいわゆるリズムネタなのに、どうしてリズムの話が出てこないのかがめっちゃ謎だった。短歌ファンかつ言語学徒の私にとって、

歌人には韻律の話、すなわちライムとリズムをきちんと語って欲しいわけですよ!!!!!

…それなのに先のエントリーでは韻についても少ししか言及されていなくて、めちゃくちゃ残念。

 

②考察が外部要因がメインになっていてPPAP自体の説明になってない

佐々木さんのエントリー名は「PPAPが面白がられる理由を言語的に説明するよ」だ。

この「面白がられる」というのがいい感じの逃げ道を作っていて、PPAP自体は面白くないけど、PPAPに関する振る舞いは面白い、あるいはPPAPを面白いと感じてしまう社会背景が存在するって暗に言ってる感じがする。

もちろんそういうスタンスでPPAPを説明しても、間違ってはないよ?

だけどPPAPそれ自体がなぜ面白いのかを説明しないと、面白さの本質には辿りつけないんだよ!!!!

お前はもはや何様だって感じだけど、でもやっぱりそうとしか思えない。

だって、寿司屋でネタを誉めずに外装ばっかり誉めてたら嫌でしょ?

それと同じことだよ。PPAPが受け入れられる背景だけじゃなくて、PPAPそれ自体を考察しないと。

 

あ、先に言っておくと、面白さを解説すつのは野暮な行為です。

だけど言葉スキーとして新奇性のある表現は面白いし、分析せずにはいられないんだよ…

では解説をはじめます。

まぁ、前置きはこんな感じにしておいて、内容へ進んでいきましょう。

まず問題です。

次の人物が手に持っているものは、英語でなんというでしょうか?

 

( ^ω^)
⊃🍎✑⊂

そう、「アッポーペン」ですね。

 

次にこれはどうかでしょう。

( ^ω^)
⊃✑🍍⊂

はい、「パイナッポーペン」ですね。

 

こいつらをこうして

( ^ω^)
≡⊃⊂≡

 

こうすると

( ^ω^)
⊃✑🍍🍎✑⊂

 

…そう、「ペン・パイナップル・アップル・ペン」ですね。

ただしこれは単語を明確に区切って発音した場合。 

 

実際にはピコ太郎が「ペンパイナッポーアッポーペン」と発音しています。

新しく複合語が作られるときは、できるだけ滑らかに発音しようとして

「パイナップルアップル」じゃなくて「パイナッポーアッポー」になるんです。

このように語を発音しやすくするように、もともとの発音を変化させることは語の経済性という原理で説明できます。口を動かすのを節約しよう、って感じ。

 このような語の変化が次に紹介するカウベルとのコラボで、いい味を出すんです。

PPAPの謎を解くカギはカウベル!!

PPAPの動画ではカウベルメトロノームのような役割を果たしています。

(なんともいえないカーンって音がカウベルです。確認してみてください。)


PPAP(Pen-Pineapple-Apple-Pen Official)ペンパイナッポーアッポーペン/PIKOTARO(ピコ太郎)

 

このカウベルが4分の4拍子をとっています。

このリズム、日本語と相性がいいんですよ。

というのも、日本語は「やま」「かわ」といった2音(ya-ma/ka-wa)で構成される語が多いんです。

「宅急便」は「たっ・きゅー・びん」って2音をひとまとまりとして発音しますよね?発音する時の癖になってしまうくらい、日本語は2音と相性がいいんです。

言葉のスケールって

音(a)<語(a-i 愛)< 句(愛だよ)< 節(それが愛だよ)<文(「それが愛だよ」と彼は言った。) 

という風に大きくなっていくんですが、この言葉が意味を成す最小単位が語なんです。

で、単語が2音で構成される場合が多くて「が」「を」のような格助詞は一語なので、これらで構成される句は奇数の音の場合が多いんですね。

だから短歌は5・7・5・7・7・の句から構成されて一首にカウントされるんです。また短歌では発音時の息継ぎなど、無意識にしてしまう休符も一音として数えることがあります。

では、PPAPはどうでしょう。

ペンパイ、ナッポー、アッポーペン、」という感じで小さく休符を入れて休符を一音としてカウントすると七五調になります。

 

・・・とまぁ、「PPAPは七五調だ!!」と指摘するだけで満足してしまっている解説者もいるんですが、この考察はPPAPの重要なファクターであるカウベルを考慮していません。

繰り返しになりますが、カウベルは動画の中で鳴り続け、全体のリズムを統括しています。

1回カウベルが鳴って、次鳴るまでに2音(2モーラ)を入れることができるリズムになっています。

なので、PPAPのサビ部分をカウベルで区切ると

「ペン/パイ/ナッポー/アッポー/ペン」となります。

 

…pineapple がpineとappleに分解できるの、わかりますか?

pineappleという語はpineとappleの合成語で、

松ぼっくり(pine)」に形が似ていて、appleのように甘い から、という理由でこの名前がつけられたそうです

「パイナップル 無料素材」の画像検索結果

それを「ペンパイナッポーアッポーペン」という新しい合成語を作る時、日本語の2音で区切るリズムによってpineとappleに分解されてしまうんですよ。

全体では「ペンパイナッポーアッポーペン」という一語を合成しているのに、局所的には合成語を分解している!

 

ハムレタスサンドは床に落ちパンとレタスとハムとパンに分かれた /岡野大嗣

 

っていう短歌と似た面白さがあると思うんですよ。

複合語を分解する面白さ!そしてそれを包括する句構造

 

まぁ少なくとも私はそこに胸がときめくわけです。はい。

以上をまとめると、

  • ただの語の羅列「ペン・パイナップル・アップル・ペン」ではなく、複合語「ペンパイナッポーアッポーペン」を形成している
  • 休符を含めると七五調
  • カウベルのリズムが複合語「pineapple」を「pine」と「apple」に分解している

というのが言語学的に考えられる、ウケる理由です。

 

それでは、おあとがよろしいようで。

参考文献

PPAPは七五調だから面白い!」じゃなくて「七五調だと面白いのは、そもそもなんでなの?」って考えられる方はぜひ、坂野先生の『七五調の謎を解く』を読んでみてください!

七五調の謎をとく―日本語リズム原論

七五調の謎をとく―日本語リズム原論

 

 

ではでは~

*1:山梨先生の語の生産性の話