魔法使いに向いてる

「終わらない日常」 を超える処方箋

本当に男根のメタファーでないものは男根しかないのか?

けっこう前に、「男根のメタファーではないものは男根しかない」というツイートが話題になった。

「これ、一休男根メタファーではないものがあるなら、ここへ持って参れ」と将軍様に無理難題を押し付けられ、考え込んだ一休さんが男根をぽろりと露出した回。

かつて敗れて行ったツンデレ系サブヒロインid:@wak

2015年12月2日

 

 

たぶんツイート主は単なるネタのつもりなのだろうけど

大学でレトリック研究をしている私は「本当に男根のメタファーでないものは男根しかないのか」気になって夜も眠れなくなってしまった。

今回はレトリック研究の観点からこの問題をきちんと検討したいと思う。

 

 

学問としてのレトリック

「そもそもレトリック研究ってなんだよ」って人が大半だと思うので触れておきたい。

レトリック研究では、「どのようにレトリックを分類するか」が主な問題の研究分野だ。*1

 

こんな研究分野は生産性マンに叱られそうだけど、

ちょっと前に話題になったテキストマイニングの手法には計量言語学の手法が主に使われている。そしてレトリック研究はその計量言語学の基礎となっている研究分野だ。

こういう事実をきちんと生産性マンにも知ってほしい。人文学だって役に立つんだよ。

 

ちょっと脱線してしまったので本題。

メタファーはどのようなレトリックとして分類されているのだろうか。

そもそも、レトリックとは何なのだろうか?という所から見ていきたい。

レトリックとは何か

レトリック研究の大家、佐藤信夫は「藪をつついて蛇を出す」という慣用句やフランスの「眠っている猫を起こしてはならない」という警句について次のように述べている。

「藪の中の蛇」「眠っている猫」が、文字どおりにそういう生きものを意味する≪本名≫として使われる場合もあるのだから、

それと比較して言えば、会議中の発言としてのそれらのことばは、いわば、ある種の事態や現象に対する≪あだ名≫だとみなしてよい。

ほかの似ているものの名前をあだ名として借用する……。

佐藤信夫『レトリック感覚』p101(講談社学術文庫

 

このように似ているものの名前を借用することがレトリックとして認定される。

例で考えてみよう。

カニかまと

 

 

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カニ。

「カニ おいしい」の画像検索結果

 

 

カニかまにはカニが入っていないけど、外見や味がカニに似ているから「カニ」というあだ名を借りている。

だから、「カニかま」はひとつのレトリック*2といえる。

「何がレトリックか」という問いに対する答えは似ているものの名前を借りること

だと、ひとまずここでは言っておこう。

…ここまで大丈夫だろうか。

 

メタファーとは何か

ではレトリックの一種である「メタファーとは何か」をざっくり紹介したい。

冒頭の佐藤信夫は次のように定義している。

あるものごとの名称を、それと似ている別のものごとをあらわすために流用する表現法が、≪隠喩≫——メタフォール(メタファー)——である。

佐藤信夫『レトリック感覚』p101(講談社学術文庫

先ほどの「藪から蛇が出る」「眠っている猫を起こしてはならない」だと

「蛇ではないけど蛇っぽいもの」(危険な存在)や「猫ではないけど猫っぽいもの」(基本寝てるけど起きると面倒)みたいなことが、メタファーとして考えられる。*3

男根のメタファーとはなにか

では本題の「男根のメタファーじゃないものは本当に男根しかないのか」を検討しよう。

まず男根のメタファーとは何だろう。

先ほどのメタファーの定義からすると、「男根じゃないのに男根っぽいもの」を「男根」と呼ぶことが「男根のメタファー」と呼ぶことになる。

バナナやキノコがその代表例だろうか。その形態が男根を連想させる。

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あと「男根のメタファーbotにはこんなものがあった。

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その形態もさることながら、

根本の「慢性的なデフレ」からスタートして

「厳しい状況をしのいでブレ」「次世代へつないでいく」あたりもすごく男根的だと思う。

このように形態が男根に似ているだけではなくて、

男根が持つ性質が似ているものも、男根のメタファーとして考えられる。

男根のメタファーでないものは本当に男根しかないのか

では、本当に男根のメタファーではないものは男根しかないのだろうか。

今の私の見解では、NOというのが結論だ。

というのもメタファーの定義からすると、「似ているもの」でなければメタファーとして成立しないからだ。

たとえばこんなモフモフの猫や

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こんなかわいいスコティッシュフォールドの子猫

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スコティッシュフォールドのネコちゃん販売情報 子猫一覧 ブリーダー直販のCats

 

は男根との類似が見られないため、「男根のメタファー」と呼ぶことはできない。

 

…え?二枚目は男根っぽい??

 

…肌色っぽいし女性に握られてr…

 

 

いや、そのように見えるのは君が穢れているからだ。

 

言葉の運用を問題とする語用論の観点からすると

話者が男根と似ていると判断すれば、それは男根のメタファーとして認定される。

男根のメタファーではないと認定するものは人によって違う。

私が「あ、男根に似てる」と思ったものでも、

あなたが男根には似ていないと宣言したら、それは男根のメタファーとして成立しないのだ。

このように「男根のメタファーでないものは男根しかない」というのは反例があるため、偽の命題だといえる。

2枚目のスコティッシュフォールドの画像が男根に見えた人がいたとして、

愛猫家がそれを否定した場合。

これは愛猫家にとってスコティッシュフォールドは男根のメタファーではない、ということになる。

 

すっきりしていただけだろうか。男根だけに。

 …

それでは、おあとがよろしいようで。

*1:「どうやったら感動する言葉を紡ぎだせるか」は作家の、「どうやって人は言葉を理解しているのか」は認知心理学認知言語学の問題。

*2:メロンパンもそうだ

*3:語句レベルの隠喩(「蛇」「猫」)が連結されたフレーズ「藪から蛇が出る」「眠っている猫を起こしてはならない」は諷喩と呼ばれる