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魔法使いに向いてる

円熟と技術と才能に溢れたブログです。

『逃げ恥』の逃げって結婚して仕事しないことなのかな

最近話題の『逃げ恥』こと『逃げるは恥だが役に立つ』を読んだ。

 

この漫画は25歳の女性・森山みくりが主人公。大学院で心理学を学ぶも、就職できず、派遣の仕事も切られてしまう。みくりはの父が元部下、津崎平匡(36歳)の家事代行をあっせんするも、みくりの実家が引っ越しをしなくてはならくなり、主人公は雇用を継続したままでは住居が無くなる危機に直面する。

そこで、住み込みで家事をやればいいのでは?→いっそ結婚すれば?と話がすすむ。ただし、この「結婚」は恋愛結婚ではなく、いわゆる偽装結婚。結婚にともなう特典を受けながら、家事代行業務をみくりに”委託”するのだ。

 

●「高校生で子ども産めば?」と言わせる現実

『逃げ恥』は社会問題に真っ向から立ち向かうのではなく、「こうしたらいいんじゃね?」という軽くて明るい提案を散りばめていく漫画だ。契約結婚もそのひとつだし、中でも気になったのは、「高校生で子ども産めば?」という、みくりの提案だ。

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逃げるは恥だが役に立つ(3) (Kissコミックス)

高校生のうちに第一子が誕生すれば、就職時にはその子供は小学生だ。一番手のかかる時期は過ぎている。高校生のうちにみなが一斉に子供を産めば、親が授業中の時には一斉に子供は託児所に預けられる。家庭科の授業では子供服の作成・・・現実味はないが、空想する分には楽しい。

 

ソフトである社会制度は変わっても、ハードである身体は変わらない

そもそも、この提案の背景にあるのは出産と進学・就職の兼ね合いが取れていないという事実だ。浪人や留年がなく、ストレートに就職して23歳。はじめの3年間は仕事を覚えるのに集中したい。部下ができ、仕事を割り振る立場になるのは…よっぽど優秀じゃない限り30歳に近くなるだろう。

女性の高学歴化に伴って婚化が進むと、高齢出産に伴うリスクが取りざたされるようになった。かくゆう私もそういった教育を受けてた人間だ。保健体育の授業では「高齢出産の子どもはダウン症のリスクが高い」と教わった。当時の保健体育の先生は「何歳までに出産しろ」とは言わなかったけれど、女性が負うことになるリスクを知識として知っておきなさい、とは言っていた。

 

「若くして産む」のもリスク

では、20代で出産した女性の就労はどうなっているのだろう?生物学的リスクの面での「優等生」は幸せになっているのだろうか?

中野 円佳『「育休世代」のジレンマ』には、総合職として入社し、20代で出産している女性の事例研究が行われている。同書に登場する15名のインタビュー対象者を通して見えてくるのは、職場での「マミートラック」の存在だ。やりがいのない仕事を回され、出世ルートから外れる。始めから競争心がなければいいのだが、女性の大学進学率も上がり、「男女平等」が刷り込まれてきた世代だ。「出産し、はじめて自分が女だと気付いた」という言葉は、皮肉が効きすぎている。

しかしながら、退職は自主的に行われる。「両立が大変なので」、と。当り障りのない退職理由を出すことで、問題は個人の管理能力へと転嫁され、制度の改善にはつながらない。企業に残るのは、出産・育児と仕事を両立できるスーパーウーマンだ(実在するんだろうか)。そんな人を指して「うちにも両立している前例がある」と言ってしまっていいのだろうか。

 

海外ではどうなの?

保育園の受け入れ先が見つからず、仕事を辞めてしまうような日本の現状はどうにかならないのだろうか。現状を考察するのに以下のブログは役に立つ。

www.landerblue.co.jp

日本の現状分析は他の方がすでにやっているのでお任せして、私は海外の子育て支援制度を調べてみた。その中で気になったのが、会社でも保育園でもない、ボランティアの形で子育て支援をしているカナダだ。

カナダではショッピングモールなどの人の集まる場所で店舗型の託児施設があり、そこで子育てに関する一通りの情報を得ることができるという(ファミリーサポート制度)。日本では託児所に子供を預けるとなると有償が前提だが、どうやらカナダでは「自分が利用した分は自分で返す」という貨幣を介在させない労働のあり方が定着しているようだ。

日本でも行政やNPOによる子育て支援制度はあるが、特に保育の提供と親教育には課題を残している。

カナダは移民が多いという国柄もあって、このような制度が充実しているのだろう。今後日本も移民受け入れ枠を拡大していったら、これまでの課題に合わせて低所得の妊婦の支援だとか多言語での対応だとか、するべきことは増えていくだろう。

そこでもっと充実させるべき制度はボランティア、なのかもしれない。

そもそもカナダのファミリーサポート制度には「受けた恩をきちんと返す」という慣習が必要だ。

でもこれを、日本のある世代の人々が解釈してしまうと、「自分の親の面倒は自分で見ろ」とか「生まれ育った地元へもっと貢献すべき」といった価値観に繋がってしまう気がする。政府が介護の家族負担を推奨するとか、その最たる例じゃなかしら。

今、求められているのは就労および居住区の自由を保証し切るために、ボランティア制度を整えることなんじゃないだろうか。

私が住んでいる市の市報に掲載されているボランティアの欄を読むと、活動日が平日の昼間だけだったりする。もう少し、いろんな人の協力をあおれるようなボランティアの形を描けれればいいのにな、と思う。

 

 

「育休世代」のジレンマ 女性活用はなぜ失敗するのか? (光文社新書)

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